LDEフレアにおけるエネルギーとプラズマの供給

○柴崎 清登(国立天文台野辺山)

太陽フレアの分類で、継続時間の非常に長いフレアをLong Duration Event(LDE)と呼ぶ。LDEの継続時間は数時間から、長いものでは1日以上のものまである。この間継続してエネルギーとプラズマを注入し続ける機構が必要である。この機構として、太陽フレアの標準モデルである磁気再結合が適用されてきた。

このフレアモデルに対して、私は全く異なるモデルを提案している。上昇しているフィラメントが上空のアーケード状の磁力線にぶつかると、それを引き伸ばすのではなく、交換型不安定性(バルーン不安定性)を起こし、アーケード状の磁力線の間から櫛状にプロミネンスプラズマが上方に抜け出る。この櫛の歯はバルーニングフィンガーと呼ばれる。このバルーン不安定性がフレアの初期や主相に対応する。最近、ようこうの軟X線望遠鏡によって、アーケード状のループの上空に櫛状の構造が観測されており、これがバルーニングフィンガーに相当する。さらに、この櫛の歯に沿って上空からプラズマが落ちてくる様子が観測されている。さらに、最近のSOHO/LASCOの観測によると、CMEの発生後、多くの下降流が観測されており、その先端は上向きのカスプ状を示している。これはバルーニングフィンガーが上空まで達し、あるところから下降に転じたものと考えられる。太陽の半径程度の上空から表面までプラズマが自由落下するには1時間程度かかり、これが12倍の太陽半径からであれば約1日かかる。また、自由落下で得られるエネルギーが自分自身を加熱すると、数百万度になる。また、バルーニングフィンガーと抜け出たアーケードは磁力線で繋がっているので、落下はアーケードの上に集まる。このようにして長時間にわたり、LDEフレアのアーケード上空に数百万度のプラズマが継続的に供給される。